下水道関連の資材管理業務では、図面(縦断図)から管の寸法・材質などの情報を読み取り、Excelへ手作業で転記する工程に、図面1件あたり約3時間を要していました。本プロジェクトではまずフェーズ1(PoC)として、図面一式から縦断図を自動判別し、記載された管路情報を抽出・表形式で出力するAIエンジンを開発。学習に使用していない検証用図面10件に対して平均抽出精度85.7%を達成し、実運用に耐える精度であることを実証しました。続くフェーズ2ではこの成果をもとに、現場担当者がファイルをアップロードするだけでAI分析からCSV編集・Excel出力までを完結できるWebアプリケーションを開発し、発注企業の本番環境へ実装。読み取り・転記作業を約30分まで短縮する体制を実現しました。
対象業界、解決した課題、現在のフェーズ、採用したソリューションと得られた結果を、まずはサマリとしてまとめています。
下水道・農業用水・小水力分野のインフラ向け管路資材を扱う業務領域
図面の読み取りとExcelへの情報入力という、属人的かつ工数の大きい手作業の削減
フェーズ1でAIコアの抽出精度をPoC検証した後、フェーズ2で業務利用可能なWebアプリケーションを開発し本番環境へ実装
フェーズ1では、受領した図面一式(PDF)から縦断図を自動判別・切り抜きするモデルと、縦断図・条件シート・依頼文の3種類のドキュメントから路線番号・測点・人孔形状・管径などの管路情報を抽出するAIパイプラインを開発しました。フェーズ2ではこのAIエンジンを組み込み、ログインからファイルアップロード、AI分析、管理表(CSV)のブラウザ上での編集、既存の専用ソフトへ貼り付け可能な形式での出力までを一気通貫で行えるWebアプリケーションを構築。SSO認証、権限管理、編集の途中保存・排他ロック、AI分析精度を自動集計するアナリティクス機能まで備えた、実業務にそのまま乗る形で納品しています。
フェーズ1のPoCでは、開発時の学習に使用していない検証用図面10件で精度を評価し、全10件で抽出精度50%以上・5件で90%以上・平均85.7%を達成。事前に合意した精度保証条件をクリアして次フェーズへの投資判断材料を提供しました。フェーズ2ではこの成果をWebアプリケーションとして本番実装し、従来1件あたり約3時間かかっていた図面の読み取り・情報入力の工数を約30分まで削減する運用を実現。AI分析の結果と人手修正後の差分から精度を自動記録する仕組みにより、導入後も精度を継続的にモニタリングできる状態を整えました。
なぜこのプロジェクトが立ち上がったのか、その背景を整理します。
下水道・農業用水・小水力分野の管路業務では、発注者から受領した図面一式をもとに、管の寸法・材質・区間情報などをExcelに整理する管理表を作成する作業が発生します。
この作業は、図面一式の中から対象となる縦断図のページを探し出す工程と、そこに記載された情報を読み取ってExcelに入力する工程からなり、いずれも完全な手作業でした。業務フローを計測したところ、「情報の読み取り」と「情報の入力」の2工程だけで1件あたり約185分を要しており、全体工数の約8割を占めることが判明しました。
そこで、この2工程をAIで自動化することを狙いに、いきなり本番システムを作るのではなく「フェーズ1:PoCで精度検証 → フェーズ2:Webアプリとして本番実装」という2段階のプロジェクトとして進めることになりました。
過去の課題や、これまでの方法で解決しきれなかった理由を明確にします。
図面一式には縦断図・平面図など複数種類の図面が混在しており、まず「どのページが対象の縦断図か」を目視で探す必要がありました。さらに縦断図の記載レイアウトは案件ごとに揺れがあるため読み取りには熟練が必要で、転記ミスのリスクも常に伴っていました。加えて、抽出すべき情報は縦断図だけでなく条件シートや依頼文にも分散して記載されており、複数ドキュメントを横断して確認する手間が発生していました。また、AI導入にあたっては「精度がどこまで出るか分からないものに本番開発の投資はできない」という不確実性も課題でした。
クライアントが抱えていた状況と、それに対して弊社が提供できる強みの両面から整理します。
基本方針から提案ポイント、発注者にとっての価値、そしてなぜこの方法を選んだのかという判断根拠までを順に示します。
「正しく抽出され、かつ正しい順序で出力された情報の割合」という抽出精度の定義を要件定義段階で明文化し、発注者・開発者双方が同じ基準で成果を評価できるようにしました。フェーズ2でも検証用の精度基準を引き継ぎ、アプリ上で精度を継続測定できる設計としています。
本プロジェクトで我々がスクラッチから設計・実装したコンポーネントを、主要なものから順に列挙します。
モデルが判断を行うために必要なデータと、その形式・取得元を整理します。
推論結果としてどのような形でデータを外部へ渡すか、その形式と活用法を示します。
社内系統及び外部サービスとの接続点と、その接続方式をまとめます。
見えずらい部分で効いた設計・実装上のポイントを大きなものから順に記します。
キックオフから本番稼働までに要した期間と、本プロジェクト全体の費用感をまとめます。
フェーズ1(PoC):要件定義3週間+開発8週間/フェーズ2(本開発):要件定義~開発・テスト~検収で約7週間
フェーズ1(要件定義・PoC)370万円+フェーズ2(アプリケーション開発)約383万円(税抜)。別途、運用コスト(クラウド利用料 約4万円/月+外部API従量課金)と保守(月額制または障害時対応のみ)を設定