
共有フォルダに眠っていた対処の記録を、現場がその場で引ける状態にしました。
国内3工場で電子部品を製造しています。設備トラブルが起きるたびに報告書を作る運用が20年以上続いており、蓄積は約1.8万件。症状、発生した設備、原因、対処内容、再発防止策を書いて、共有フォルダに保存しています。 問題は、検索できるのがファイル名だけだったことです。ファイル名は年度と工場、通し番号の組み合わせで、中身を示す情報が含まれていません。目的の事例を探すには、フォルダを開いて1件ずつ中を確認するしかありません。実際に探した場合で平坧40分。見つからないまま終わることも多く、そもそも探さないのが常態になっていました。 代わりに使われていたのが、経験20年以上の保全員への口頭確認です。該当するのは数名で、「その症状なら5年前に同じことがあった」と記憶から引き出せます。ただし在席している時間帯に限られ、夜間に設備が止まった場合は当直者が自宅へ電話をかけていました。件数は月22件です。 その記憶を持つ保全員の多くは50代後半で、数年内に退職を迎える見込みでした。
報告書は年代で書式が3世代に分かれ、うち2010年以前の約4割は紙をスキャンしただけのファイルでした。熟練者の知見が一番濃い時期なので、対象外にせず、画像から文字を読み取る処理を足しています。
「原点復帰しない」と書いた報告書は、「ホームポジションに戻らない」で検索しても見つかりません。語句の一致ではなく、意味の近さで探す方式にしました。
要点をまとめて見せるだけでなく、元の報告書と添付の写真・図面へのリンクを必ず並べます。間違った情報で作業すれば事故につながるため、最終的な判断は原文を見て行う形にしています。
従来は報告書が工場ごとのフォルダに分かれていました。1工場で試したのち、3工場を横断して探せる形で展開しています。
もっと大きい変化は、探すこと自体を諦めなくなったことです。従来は40分かけても見つからないため、最初から自力で対処するケースが大半でした。
残った7件は、前例のないトラブルや、分解するか翌朝まで待つかといった判断を伴うものです。当直者からは、電話をかけずに済むことが気持ちの面で大きいという声が出ています。
検索の記録を見ると、他工場の報告書が参照されたケースが全体の約23%を占めます。同じ機種を複数工場で使っていても、対処のノウハウは分かれていました。
共有フォルダから報告書を集め、書式の世代を自動で見分けます。スキャンしただけのファイルは、傾きや汚れを整えてから文字を読み取ります。読み取った内容を症状・原因・対処に分けて整理し、意味を比べられる形で保存。保全員が入力した症状も同じ形に変えてから、近い内容の報告書を探し、要点と元のファイルへのリンクを提示します。
9カ月
試行(1工場。文書の状態調査と文字読み取り工程の追加を含む)3カ月、本開発4カ月、残り2工場への展開2カ月
1650万円
試行 420万円+本開発 850万円+2工場への展開 380万円(税抜)。運用費用は3工場で月3万円程度